坐っているんが、リンガル矯正治療を発明したとても優しい藤田欣也先生。 | 歯科界に変革を起こした偉大なP.K.Thomas、保母先生、Bob Lee |
日本人の歯科医の偉大な発見は、阿部晴彦先生のシンラシステム、保母先生のツインテーブルシステム、そして、藤田欣也が発明したリンガル矯正治療だということが知られています。中央で坐っているのがリンガル矯正治療を発明した藤田欣也先生。当時、ボクシングを教えていたので、選手の歯並びを治したくて、藤田先生にリンガル矯正治療を習いに行きました。その後、伊藤吉美先生の娘さん婿の下里先生と、欣也先生に会いに行ったら、ソバ屋に連れて行ってごちそうしてくれました。私みたいな下層の貧乏歯科医ですら喜んで相手してくれるのです。後、韓国での学会でばったり、私のことを覚えていてくれて、夕食を誘ってくれました。それだけでなく、患者さんを沢山紹介してくれました。失敗ばっかりしている馬鹿な私ですらなんとか食っているのは、矯正治療を勧めてくれた故、西口教授、矯正治療を教えてくれた一色康成教授、そしてリンガル矯正治療を教えてくれた藤田欣也先生のおかげです。藤田欣也先生の発見、発明によって、生き永らえているのです。また藤田先生の装置を使って3つの論文を書き上げました。藤田先生、有難うございます。 |
Key of Success Lingual Orthodontics(リンガル矯正治療(舌側矯正治療)の治療の鍵) 歯並びが悪いと歯を出して笑うことを避け、不自然な笑い方を覚え劣等感に陥ったり、ひきこもってしまいがちになる。以前、自分の子どもの悪い歯並びに悲観した母親がその子を殺した事件があった。歯並びなどの外見は人に快、不快刺激を与え、好感、嫌悪感を誘発し、扱いに影響し、良い人は良い扱いを受け、悪い人は悪い扱いを受ける。悪いと社会的出会いを回避し、不適応感を和らげる為にひきこもるというような防護策を身につけ、社会的適応度が低くなる。矯正治療を始めとする歯科治療は口元や顔の外見を美しくすることができるので、自分の外見が変わって魅力的だと思うようになると、対人技能能力は高くなり、その社会的波及効果は、社会的行動に影響して自信のある行動パターンを形成し、自己評価が安定して適応度も高くなる。このように、歯はコミュニケーションに関わる部分なので、良し悪しによって、好感、嫌悪感を持たれるので、歯並びを治したいと思っても、矯正治療を受けている人の絶対数が少ないので、矯正装置を見られるなどしてプライバシーの侵害、匿名性の権利の喪失などを経験したり、自尊心、尊厳を喪失させるのではという不安から躊躇してしまう。実際、矯正装置がからかいの対象となるのは日本に限ったことではない。矯正治療を受けることが社会的、職業的地位に貢献し、社会的に成功する手段だと考えられている。そのため、矯正装置が見えないプレートタイプの矯正装置や裏側で治療する舌側矯正治療が注目されている。 1978年、藤田欣也先生は、世界で始めて、歯の裏側で矯正治療するという見えない舌側矯正治療のプロトコールを考案した。多くの歯科医は、この治療の手順が困難だと思い臨床に取り入れようとしないのであるが、この日本で生まれた最も審美的な矯正治療をいかにシンプル化にして臨床に取り入れるかを考えた。 Lingual Orthodontics(舌側矯正治療)を容易する
Sliding Mechanics Disadvantage(スライディングメカニクスの欠点)
オムコ社は.018インチのブラケットスロットにフルサイズのワイヤーが使用されなかった場合のトルクロス値を示した(表1:Torque Loss)。
1/トルクロス対策
2. Straight Wire(ストレートワイヤー
3. En Mass Closure(エンマスクロージャー)
舌側矯正治療は上顎臼歯部の固定が弱くなるので、アンカレッジ プレパレーションするべきである(図9:Anchorage Preparationの方法)。
1/EXT Site(便宜抜歯部位) 2/Inter digitation(咬頭嵌合) 顎間ゴムに対する注意
ClassⅡ顎間ゴムに依る大臼歯のロスは、大臼歯の近心回転に起因する。舌側からのⅡ級顎間ゴムは大臼歯を遠心回転させ、大臼歯をロスさせる事が困難になるので表から使用する(図13:顎間ゴムによるミッドラインコレクション)。
5.Enemel Reduction(エナメル質削合) Enamel Reduction(エネメル質削合)注意 6.Expansion(拡大) 7.Functional Appliance(機能的矯正装置) Lingual Orthodontics Ideal Case(舌側矯正治療の理想的な症例)
Lingual Orthodontics Hard Case舌側矯正治療の困難な症例) 開口症例に対する対策
2. 骨格的Ⅲ級
Lingual Orthodontics Advantage(図21: Lingual Orthodontics Advantage) 1.Invisible(見えない)
i4.Space Closure(抜歯空隙閉鎖)
5.Bite Plane Effect(バイトプレーンエフェクト) 2.TMD解消 3.臼歯部挺出 4.Spee Curve Auto Correction(スピーカーブオートコレックション)
下顎前歯は、上顎前歯のブラケットのバイトプレーンに接触して圧下されれば、下顎歯列のスピーカーブが自動的に改善される(図25:下顎歯列のスピーカーブが自動的に改善される)。
7.Habit(習癖) Lingual Orthodontics Disadvantage(図27:LingualOrtho. Disadvantage)
1.Periodontal Problem(歯周病の問題)
Dennis Tarnowは5mmの接触点から歯槽骨まで距離が乳頭を存在させることを見つけた2) (図30:Papilla)。乳頭を失いブラックトライアングルが出現した場合、エナメル質削合によって接触点を下げ、接触点から歯槽骨までの距離を5mmにして乳頭を作る。(図31:Black Triangle)
2.Wire Bending(ワイヤーベンディング) 藤田欣也先生は、ワイヤーに犬歯と小臼歯の間に犬歯オフセットを入れる必要があることを世界で最初に見つけ、犬歯オフセットが組み込まれたワイヤーをマッシュルームアーチと命名した3)(図32:マッシュルームアーチワイヤー)。 竹本京人先生は、上顎側切歯は前歯、犬歯より約0.5mm位薄いことや、6と7にもセカンドオーダーベンドが必要になることもあり、このワイヤーをクリスマスツリーアーチと命名した4)(図33:クリスマスツリーアーチワイヤー)。 下顎第1小臼歯の舌側咬頭は劣形の場合が多いので(図:下顎第1大臼歯)、レジン修復してセカンドオーダーベンドを排除する必要がある(図35:下顎第1小臼歯レジン修復)。
3.Tip(傾斜) Space Closure(抜歯空隙閉鎖)の注意 1.舌側矯正装置のブラケット間距離(Inter Bracket Span)が短いので、抜歯空隙のスペースクローズにおいて、強い力が加わり、早期に抜歯空隙閉鎖が終了する。そのため、前歯を舌側にTip(傾斜)してしまう(図36:下顎前歯は空隙閉鎖で舌側傾斜する)。
ティップ(前歯の傾斜)を生じさせないようにするための対策 4.Bowing Effect(ボーイングイフェクト) 1/Transverse Bowing Effect(トランスバースボーイングイフェクト)
トランスバースボーイングイフェクトに対する対策
i3.犬歯-小臼歯間牽引:前歯部と臼歯部を別々に8タイし、犬歯と小臼歯間で牽引する。第1大臼歯、第2大臼歯まで延ばすとボーイングイフェクトが生じるからである。 4.パラタルバー舌側から空隙閉鎖すると大臼歯を遠心回転し、ボーイングイフェクトが生じる。そのため、大臼歯の遠心回転をパラタルバーで予防する。 (図41:犬歯-小臼歯間牽引)。 2/Vertical Bowing Effect(バーティカルボーイングイフェクト) スペースクロージャーにおいて牽引力が前歯を挺出させ、臼歯部を近心傾斜させバーティカルボーイングイフェクトを生じさせる(図42:Vertical Bowing Effect)。 バーティカルボーイングイフェクトに対する対策 1.補正の為のAnti Bowing Curveを組み込む。(図43:Anti Bowing Curve)。
5.Overlap(オーバーラップ) 下顎前歯切端が上顎のバイトプレーンに当たる為、スプリント効果で下顎が後退し、上下顎前歯間にスペースができたり、オーバーラップも少なめに仕上がる(図44:Bite Plane)。対策として装置をなるべく深めに装着し、治療中にバイトプレーンを削る(図45:Bite Plane Trimming)。
6.EXT(抜歯)
抜歯すると骨よりも先に結合織、上皮が侵入するが、抜歯窩が完全に骨で埋まらない。その部位に歯牙を移動すればポケットができ、ブラッシングによって、ポケットがなくなれば歯肉退縮が生じる。 EXT Decision(抜歯部位の決定) 藤田欣也先生は、リンガル矯正治療の際の抜歯部位の選択の優先順位の原則を示した5) (図47: 抜歯部位の選択の優先順位)。 図47: 抜歯部位の選択の優先順位) 1/Non Ext:エネメル質削合、拡大や機能的矯正装置を併用して非抜歯治療を考える。次に、 2/Theree Incisor EXT:下顎前歯の1本の抜歯を考える。 7.Treament Term(治療期間) 前歯部のインターブラケットスパンが短い為、叢生の歯牙に最初からブラケットの装着ができないので、治療期間が長くなる。 Bonding(ボンディング)
3.上顎前歯ブラケット 上顎前歯ブラケットは、上顎前歯と臼歯間に上下的な差を是正する為に歯肉側に装着する必要がある。
舌側矯正装置は歯牙の傾斜は、ブラケットハイトに影響する。傾斜が変化するとその位置での歯の厚みも違ってくるので、インアウトの問題が出現してしまう(図51:Lingual Bonding)。
臼歯のLA Point(FACC Point)、つまり、上下的中央に装置を装着してみると、上顎前歯は唇側に傾斜しているので、LA Pointは歯頚側1/3に来る。上顎前歯は傾斜しLA Pointは歯頚部を通過するので、オーバーラップを作る為にも前歯部のブラケットは、歯頚側1/3に装着する必要がある。歯周組織を配慮してLA Pointに装着したければセカンドオーダーベンドを入れる必要がある(図52:Upper LA Point)。 Lower Anterior 下顎前歯は、下顎骨平面に対し直角に萌出し、直立しているので、前歯のLA Pointは臼歯のそれと上下的に一致する。つまり、下顎のブラケットは、前歯、臼歯ともに上下的中央に装着すればよいことになる(図53:Lower LA Point)。
Last Molar Bonding(最後臼歯部のボンディング)
Bracket Height(ブラケットハイト) Upper Anterior
歯周組織を守る為にブラケット底部から歯肉縁まで、約1mmのスペースを開けるべきなので、舌側結節の形態修正する必要がある(図58:Gingival Space)。ブラケットの基底部までの高さは約3mm(矢印)、切端からのバイトプレーン迄の距離は約1.5mm(点線)、バイトプレーンからブラケット基底部までの距離は約1.5mmということになる(図59:Bite Plane Height)。3mmの位置にポジショニングするとオーバーラップは1.5mmになる。バイトプレーンを0.5mm削合したとしてもオーバーラップは、2mmしかとれない。傾斜が強い場合は、低くポジショニングする必要があり、舌側矯正治療は、深いオーバーラップを作ることができない。
Treatment Procedure治療手順 舌側矯正治療のステージは通常の唇側の矯正治療と同様、1.Leveling Stage、2.Space Close Stage、3.Finishing Stageに分けることができる。比較的簡単な上顎第1小臼歯抜歯症例を用い治療の流れを示す(図:Treatment Stage) 1.Leveling Stage(図:Leveling Stage,2.Leveling) レベリングに.014~.016インチのナイタニウムワイヤーを用いている。 注意 1.咬頭嵌合が狂わないように犬歯と小臼歯の間に90°の犬歯オフセットを組み込む。 2.Space Close Stage(スペースクローズステージ) 犬歯オフセット スペースクローズ時の注意
下顎犬歯は、舌側の皮質骨と衝突して倒れ、犬歯部にOverjetが出現しがちなので通常のワイヤー形態(図65:Wire Configuration)より前歯部カーブをストレートにする(図66:Lower Space Close Wire)。
a.Transverse Bowing Effect OffsetからのDistalはBowing弓状にする。この場合も臼歯部を8TieしUnitにして、固定を強化する。Bowing Effectが懸念される場合、犬歯と第2小臼歯間で牽引する。 b.Vertical Bowing Effect 臼歯がロスし、固定を失い易いので、上顎のワイヤーにReverse Curveを組み込み、臼歯をアプライトし、固定を強化する(図:Upper Anti Bowing Effect)。下顎のワイヤーには、Reverse Curveの組み込みの量を減らし、臼歯がロスできるようにする(図:Lower Anti Bowing Effect)。ClassⅡ治療では、下顎第2小臼歯を抜歯したとしても、Ⅱ級顎間ゴムの使用が要求されるので、上顎前歯、下顎臼歯の挺出、咬合平面の回転防止の為に、上下ともにReverse Curveを組み込む。
3.Finishing Stage(フィニシングステージ) 模型をコピー機でコピーして、そのコピー上で細いワイヤーを用いて、ワイヤー形態を形成する。ワイヤーベンディングは、犬歯と小臼歯間、小臼歯、大臼歯間のみならず、たとえば、上顎側切歯が薄い場合にオフセットが入ることも、犬歯が厚い場合にインセット、第2大臼歯にもインセットが入るかもしれない。側切歯は、ティップによって低位になりがちなので、Buccal Crown Torqueを加える。 4.Retention Stage(リテンションステージ) 開口治療後、扁桃腺が腫れている場合は、舌が腫れた扁桃腺を避けようと舌を前にだす舌前突癖が出現して後戻りが生じることがある。 ラムズィは、顔はコミュニケーションに関わる個所で好感、嫌悪感を誘発し、口と目が最も影響する報告している。テリーは、顔全体に対する評定と、顔と各部の評定の相関を分析した結果、顔全体の魅力度と最も相関が高かった順位は、1.口であり、2.眼、3.髪、4.鼻の順序で、魅力度と最も相関が高いのは口であることを明らかにした。マッカフィーは、顔の評価において、口が眼よりも影響することを明らかにした。このように、印象形成に最も、大きな影響をするのは口元であることが明らかにされている6)。 参考文献 1)藤田欣也:リンガルブラケット法の開発,日矯歯誌,37:381-384,1978 |